いろいろな病院を経て、ようやく終の棲家、って感じですね。

外科外来にいた頃はとてもクールな性格で、次から次へと仕事をこなしてたのよ。
ここまで周囲に目を配るようなったのはこの病院に移ってきてからね。
ホント言うと、入職して3ヶ月でやめようと思ってたのよね。
それが、3ヶ月が半年になって、半年が3年になって、今に至ってる(笑)
正直、年齢的にもそろそろ引退するときかなぁ、なんてことはたまに思うんだけど、
看護師として、プライベートでも趣味を楽しみながら働くことはまだまだ続けたいわね。
★稲垣(62歳) : 1985年に入職。マイカー通勤・マイホーム。★

26歳のときに結婚したの。
それまでは東京のほかの病院・クリニックで勤務してたのよ。
結婚の理由が「働きたくなかったから」だったから(笑)、その後10年くらい専業主婦してたわ。
3人子供がいて、その一番下の子が小学校に上がった時点で復職したのね。
復職当初は診療所のようなところなどで2~3時間勤務だった。
今は常勤で、西武川越病院が人生で一番長い勤務場所ね。
★安藤(66歳) : 1989年に入職。マイカー通勤・マイホーム。★

年齢重ねると、やりくりがうまくなっちゃうのよ ~稲垣談~

稲垣:指示や判断などで「う~ん?」と思うこともあったし、
納得いかないことを妥協することもあったけど、
働く環境というメリットを考えるとそれはたいしたことではなかったわね(笑)、
だから長いこと働いてこられた。
子供がある程度育ったときに、
違う病院で働きたいという想いが芽生えたこともあったのよ。
一般患者を対象とする病院で働いていたこともあったでしょ、
だからそちらに戻りたいかなぁと感じることもたまぁにあったわねぇ。
でもまぁ、ここで別にいいか、という結論にたいてい至っています(笑)
辞めたら給与も一からになるし、いつまでやれるかというのも不安だしね。

安藤:今は、常勤で日勤なんだけど、仕事以外の時間がもうちょっと欲しいと思う。
この病院がどうとかではなく、自分の体の調子とのバランスよね。
この病院にはまだまだ居続けると思うし(笑)


スパッと上がってスパッと切り替える、これよ ~安藤談~

安藤:この仕事は人の命を預かっているのと同じなので、正直に誠実にやらないといけない。
ホント、正直に生きていかなきゃって思う。いや、真面目な話!
細かいことでもキチンと報告するというのも徹底していますから、当たり前かもだけど!
仕事内容としてはちょっとハードだけど、17:00になれば必ず帰ることができるし
逆に17:00以降に残っていると怒られるのよね(笑)
仕事が終わったらいっさい仕事のことは引きずらない!
引きずっちゃうと辛いと思うわよ、やっぱり。
昔はこの病院はもっと家族的でちょっとゆったりしていたけど、
規模が拡大し、寝たきりの患者さんも増えてきて、勉強することも多くなった。
だからやることがたくさん増えてきたのよね。
専門性はより高められるようになったわね。

稲垣:私は若い頃は仕事後も引きずっていたけど、年とってくるとだんだん図々しくなって、
若い頃は仕事後も頭に響いていた補助器具音も、すっかり聞こえなくなったわ。
そう考えると年をとることは大事だし幸せよね(笑)

稲垣安藤:あはははははははははははははははははははははは!!

◎フリートーク◎ ~60代ベテランが思う今日この頃~

稲垣:医療をやらずに、老人のお世話だけしていればいいと思って入職して、
あっという間に辞めちゃったという人がたくさんいるのよ(笑)

安藤:医師や介護士だけでは気がつかないところを、私たちがフォローするって感じ。
おむつ交換とかは介護士の仕事でしょ?
という意識の人も結構いるのよね、世の中に。
そういう病院もあるかもしれませんけど、
西武川越病院は私たち看護師も全員体制でやってるわね。

稲垣:声を出せない、意思表示がうまくいかない患者様が多いわけだから、
できるだけ傍にいて、見抜いてあげないといけないじゃない?
もちろん大変だけど、そうすると、仕事として深くなるわよね
面白いと思うんだけどなぁ。

安藤:老人相手にただ優しく接していればいい、という認識は大間違い!

稲垣:『この人にはどんなことをすると喜んでくれるかな』という創意工夫が必要!
時間がない中で、そこをどう考えていくかが大事になるよね。治療のことだけでなく。
だから、結構頭を使うのよね(笑)

安藤:パンフレットによくあるような、看護師と患者様がさわやかに楽しげに会話している、
そういう上っ面な写真だけでイメージして、入職したあとで後悔する(笑)
実際の仕事では、時間に追われるし、おむつ交換もするし、患者様はひとりじゃないし、
そんな写真からイメージされるような悠長な働き方はできません!(笑)
そこを正しく発信してほしいわよ、なにか広告とか出すときも。
ハードです、はっきり言って!

稲垣安藤:そうよそうよ! ね!! あはははははははははははははははは!

稲垣:ご高齢の方が多いから、歌を歌ってあげたりもするのよ。

安藤:あら、いいわね。

稲垣:重症で動けない患者様もいらっしゃるんだけど、多少動ける患者様もいて、
ちょっと昔の歌を歌ったり、あやとりをしたりすると、喜んでくれるのよ。

安藤:私はそういうのしないわね。あははははは。

稲垣:呼吸器官が良くなくって、夜になるとニップを使っている様な患者様が、
歌を一緒に歌っていたら補助器具がいらなくなるくらい回復したことがあったのよぉ!
もしかしたら、肺が鍛えられて肺活量があがったのかも?(笑)

安藤:あら、すごいじゃない。

稲垣:リハビリの人たちの仕事になるかもだけど(笑)
基本的には治療は医師がやって、私たちは患者様が楽しんで生活できるようにするんだけど、
楽しんでもらっているうちにそういうことがあるのは、やっぱり嬉しいわよねぇ。

安藤:ご家族の方とかも、頑張ってる方、いらっしゃるわよね。

稲垣:でも、たまにいらっしゃるご家族の方とかは、正直よく分かってない方が多いわよね。
わけの分からないことを言ってきて、対応に困ることがある(笑)ほんっとに(笑)
親子だから分かる!とか言って全然わかってなかったりとか(笑)
第三者である私たちの方がよっぽどよく分かってる(笑)

稲垣安藤:あははははははははははははははははははははははははははははは!

稲垣:だからもっとご家族の方も来院する頻度をあげてくれるといいなぁって思う。
だけど、し過ぎるのもどうかと思う(笑)
毎日来院されるご家族を見ると、逆に心配になっちゃうのよね。
もっと自分の人生大事にしたほうがいいじゃない?なんて、余計なお世話だけど思っちゃう。
愛情があっていいんだけどね、人生1度なんだから、新しい趣味とか持ったら?とか、
つい考えちゃう。ホント、心配になっちゃうのよね。

安藤:いいのよぉ、それで。
しょっちゅう来院される方は、人生を棒に振っているとかじゃなくて、
それがその人の幸せなのよ、生きがいなのよ、きっと。
一生懸命大事な人の世話をすることで、幸せなんだと思うわ。
亡くなったときに生きがいがなくなるんじゃなくて、
亡くなったときに自分自身をちゃんと納得させて、
残りの人生を自分のためだけに費やせるようにするために大事なのよ。

稲垣:でも、こちらがしっかりケアしている以上のことを望んで、
ネットか何かで調べたのか、いろいろなグッズを持ってきては試していくご家族もいるのよねぇ。
「それは不要なんだけどなぁ」と思いつつも、
一生懸命になってやられているから、私たちも何もいえないことがあるのよ。
でも、ちょっと目に余ったときは、ご家族が帰られたあとに
「大丈夫?余計じゃない?」
とか、患者様に確認しちゃうこともあるくらいよ(笑)

安藤:稲垣さんはプライベートでも何十年と付き合いがあるお友達で、
ハッキリ言い合える仲間なんだけど、でも仕事では考え方やスタンスがちょっと違うのよ、
だから同じ病棟にはいたくない感じ(笑)

稲垣安藤:あははははははははははははははははははははははははははははは!